玲瓏の奈落

奈美様がなぜ…
《もしかしたら…５月、６月は会えないかもしれない》
とおっしゃったのか？

それは…今回のボクの調教でミスを犯されたからです。
ミスと言うよりは、サークルの意向に逆らったと言うのがその理由です。

ＳＭは愛情が無いと成立しません。
愛のないセックスはありえても、愛のないＳＭは危険と考えられていました。
可愛さ余ってみたいの愛情表現で、遊びの延長とは違うのです。
もしも遊びと割り切るなら…
クラブでのプレイだけと割り切った方が安全かもしれません。



ボクの所属するサークル内では…
自分の恋人や、夫婦間で従属関係を築いておられる方がほとんどでした。
そのほとんどが、一般的に言われる、SMお見合いパーティーで知り合われるカップルです。


お見合いパーティーでカップル(従属)となっても…
片方のパートナーがベテラン(正会員)であれば問題はありませんが…
カップルの両方が初心者だと危険を起こしやすく…
しっかりとした知識や技術を教える勉強会などがありました。
それがサークルと言われる集まりです。


初心者同士のカップルの場合…
最初のうちは個人的な調教は規制され…
調教を行なう場合は、全てサークルの監視下の元に行なわれていました。
ＳＭを追求する上で、愛情表現は紙一重です。
どこまでが許されて、どこまでが許されないのか…
お互いに判断がつきにくくなる事態を心配したものです。


例えベテランと言えども、度を越し過ぎて犯罪者となったり…
取り返しがつかない自体(廃人)を招く事があります。
それを未然に防ぐ意味でも、監視は必要とされてきました。
その勉強会に合格し、晴れて専属を迎え入れる事ができれば…
サークルの正会員(御主人様、奴隷)として認められるのです。


勉強会途中…
調教に行き過ぎがあれば即座に中止が言い渡され…
再指導が行なわれます。
まだ今ほどＳＭが認知(？)されていな時代。
サークルには厳しいルールがありました。
(今はだいぶ緩和されましたけど…)


当時のルールで…。
ベテランや初心者に限らず…
サークルの意向に従わない者は、何らかの処分が下りました。
最初のうちは１、２ヵ月の調教禁止処分。
それがひどくなると半年、１年。
最終的に強制的に別れさせられ退会処分となり…
提携している各サークルに報告されてしまいます。
退会処分となると…
ベテラン奴隷は行き場を亡くし、希望があればどこかへ売られていきました。
売られた奴隷達を、他サークルのパーティーで見かけたりしました。
売られると言っても…
里親探しのようなもので、人身売買などではありませんのであしからず。



初心者の奴隷には寛大な救済措置もありましたが…
大抵は自分のＭ性に自信が持てなくなり辞めていく方がほとんどでした。


Ｓに限っては、飼い主の立場から責任重大で…
そのままサークルに残るには、期間限定でマゾとしての調教を体験する事になります。
大抵のＳはそれを嫌い、行方知れずになってしまいまう方が多かったです。


今回の奈美様の場合。
サークルのリーダーのご紹介で、驚く程お若くして異例の入会。
今は詳細は書きませんが、後々紹介できるハズです。
とにかく、奈美様は異例中の異例で入会されたのです。
パートナーがいない状態で、様々なＳとしての経験を積みました。
奈美様のお持ちになる天性のＳの素質は…
次期リーダーの幹部候補筆頭と噂されていました。


ですが…
見習い奴隷として、何人ものマゾ(男女合わせて５人くらい)を調教するも尽く失敗。
そのほとんどが、サークルで禁止されている行き過ぎた調教が理由だったそうです。
(今思うと普通の調教に思えるのですが…(笑))。


見習い奴隷達とは強制別離となりますが…
本当のところは奈美様の御調教に着いてこれず…
自分のＭ性に自信が持てなったと言う理由でサークルを辞めてしまうのです。
そのうちの１人は…後にパーティーで再会しますが…
最低な奴隷に堕ちていました。



奈美様ご自身のお考えは…
徹底的にマゾを追い込むことでお互いに成長できると…
信念を持って調教されていたようなのですが…。
厳しかった当時のサークルとしては…
奈美様のお考え（御調教）は受け入れられませんでした。


誰もが素質を認めながら、一行に正式会員になれない奈美様。
そんな時、サークルのメンバーであるクラブのママさんから…
クラブの女王様として、一般奴隷の調教を依頼されるのです。
クラブのお客を調教するのは気が進まず…
一度はお断わりされた奈美様でしたが…
ママさんの強い後押しで調教引き受けざるをえなくなったそうです。


そして、ボクと出会ったのです。
ありがたい事に奈美様は、ボクを一目御覧になり…。
『今まで見てきたどのマゾとは違う！このコは私だわ。』
と思われ、すぐに…
『このコを見習い奴隷にする』とサークルに申し上げたそうです。



ボクのような一般からの見習い奴隷は例がなく…
慎重に扱う事を条件に、サークル側は奈美様の申し出を受け入れました。
言わば、ボクも異例中の異例なのです。


１回目、２回目と調教監視が進むうち…
サークル側もボクのＭ性に驚いたそうです。
奈美様の御調教中に、終始涙を流し、耐え、感激している姿に感動すら覚えたと…。
お世辞のお上手な先輩諸氏からお褒めをあずかりました。
ボクの知らないうちに…
奈美様とボクの御調教を隠し撮りしたビデオは…
サークルのパーティーで上映されて好評だったとか。


奈美様のミスとは…。
それは監禁室での拘束。
そして…サークルの中止命令を無視された事でした。
当時のルールでは、初心者への監禁拘束は絶対厳禁。
勉強会での経験があるとはいえ…
まだ1度も専属奴隷を持たない奈美様は正式会員ではありませんでした。
しかも…若過ぎました。
ボクについても、クラブの経験程度では未経験者と変わりません。


御調教を監視していたサークル側は…
奈美様独特の追込みや、監禁拘束で狂いかけているボクを心配し…
即座に中止の命令を下したそうです。
(警察官役の非会員がお部屋を出て行った時に…)


ところが奈美様は…。
今、中止されてはボクが本物になりきれないまま終わってしまう…
と、ボクの調教をお続けになられます。
サークル側からお部屋に連絡があるのを事前に予測し…
インターフォンや電話の電源を事前に切られていたそうです。


また…
調教中、不測の事態を想定して別のメンバーが合鍵を持って監視をするのですが…
その合鍵も、事前に奈美様が御調教室にお持ちになられた為、止める事は不可能でした。
奈美様のこれらの行動は明らかな規則違反。
それも重罪の部類です。
この日をきっかけに…
御調教室の合鍵はメンバー全員で所持管理する事になったのは言うまでもありません(笑)


最終的に不測の事態には至りませんでしたが…
その後厳しく罰せられるハズでした。
今の規則では、Ｓの方に１、２ヵ月の強制Ｍ調教になるのでしょうが…
当時なら強制退会も止む負えませんでした。


ただ最終的に…
奈美様の愛に、いじらしい程すがりつくボクの姿を御覧になられた、
サークルの比較的若いメンバーからの助言などで、寛大な刑で許される事になります。
『３ヵ月の調教禁止』程度で済んだのも、当時としては異例でした。


奈美様とボクの事件は、サークルを世代交替させるきっかけになりました。
(もしかすると…これも奈美様の計算だったのかな？)
奈美様はサークルからマゾ調教を言い渡されましたが…
新しい幹部の計らいでご愛用の鞭をサークル内の金庫に預ける事で許されました。
ただ奈美様は、体の一部である鞭を取られ…
『私生活にも影響する程ショックだった』とお話されていました。


奈美様の御調教は伝説として、今のメンバーの間で語られています。
奈美様とボクのコンビは、誰もが認めるところとなり…
新しいサークルの限界まで突き進んでいきます。


自分でも予想のつかない…あの結末まで、突き進んでいきます。