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声
~22歳 4月~
結局、ボクは御調教部屋のドアの前にいました。
《ピーンーポーン》
呼び鈴を押して、蓄奴の姿勢でお待ちしていたのです。
~3月31日 PM6:00~
奈美様からの面接のお電話をいただき、眠れぬ夜を過ごし…
面接から逃げてしまおうと決断したハズでした。
決断した後にぐっすりと眠り、寝起きに夢精したのに気付きました。
飛び起きて、お漏らしした下着とパジャマを着替えて洗濯している時。
洗濯槽を回る洗濯物を見ていたら、急に涙が零れてきたのです。
悲しくて、悲しくて…。
面接に行けば…。
合否にかかわらず人生は台無しです。
ボクが、奈美様から逃げようとしていた決断は…
人間…いや、マゾとしても正しい決断です。
人生を犠牲にする事はありえても…
人生を台無しにしてまで、得られる幸せなどありません。
それは、マゾなら必ず心掛けておなかければならない事です。
それはサドならば、当然心掛けている事でしょう。
ですが…。
ボクの胸の中は…
《奈美様にお会いしたい》
その一心で涙を流していました。
《面接なんかどうでもいい!奈美様にお会いできるだけでいい!》
虫のいい話に聞こえるかもしれませんが…。
面接から逃げれば…2度とお会いできなくなる。
純粋に…会いたい、会いたい気持ちが募るのです。
洗濯をしながらシャワーを浴びました。
涙の流れる顔を洗い、磨くように丹念に身体を洗いました。
お腹の中を綺麗にする為、お湯洗浄で清めました。
無駄毛のお手入れをし、奈美様に作っていただいた衣裳を着ました。
~3月31日PM10時~
桜の咲く土手沿いを自転車で走ってました。
ブラのカップの部分を出したTシャツ…
前から見れば際どいホットパンツ…
後ろから見れば完全なTバックのジーンズ。
恥ずかしかったので、できるだけ暗くて人気の少ない道を進みました。
我慢できなかった…。
悲劇が待っていても《会いたい》と思う気持ちが上回りました。
それは一般社会で言われる《恋心》でした。
人生を台無しにするだ思いながら…
奈美様を恋しい気持ちが勝ってしまいました。
《面接に行くんじゃない…奈美様を一目お見かけしに行くんだ!》
待ち構えている不幸な事実を誤魔化しながら…
恋心だけでペダルを漕いでいました。
間違った選択…。
Sを止められるのはMであり、Sは止まらない生きものです。
逆に、MはSの要求をできるだけ受け入れながらも…
冷静さを失ってはいけない生きものです。
後に冷静に振り替えれば、マゾとしてのボクの選択は間違いなのです。
ただ…一人の人間としての選択はどうでしょうか?
愛する人に、一目だけでいいから会いたいと言う気持ち…。
それは止められるのでしょうか?
本気で好きなら…何があっても会いに行くのではないでしょうか?
今、自転車のペダルを漕いで御調教部屋に向かうボクは…。
マゾじゃありませんでした。
奈美様への押さえきれない愛を求める行動は…。
《恋は盲目》なのでしょうか?
土手沿いを進み…国道の歩道に出ました。
辺りは街路灯で明るく照らされ、車の往来も激しく…
終電に間に合ったサラリーマンやOLの皆さんの姿も見かけました。
4月の夜です。
半袖のTシャツを着るには早すぎる季節。
ましてやホットパンツで自転車に乗っていれば尚更目立ってしまいます。
それに輪をかけるように、胸の部分からブラカップを露出させている異様な姿。
白のTシャツに目立たぬように白いブラを選びましたが…
ちらっと見ただけで『あれっ?』と不思議がられてもおかしくはありません。
前から走り来るボクの姿の異様さに振り返れば…
ホットパンツの後姿はお尻を丸出しのTバック。
誰の目にも迷惑な露出狂に見えるでしょう。
当時、肩までかかりそうな髪を伸ばし始めた頃で…
ベダルを踏み込めば、風で髪は後ろになびくのです。
細身の身体で髪をなびかせるTバック姿のボクに…
国道を走る後続車から声が掛けられました
『おねぇちゃん!いいカッコしてるな!俺と遊ぼうぜ!』
顔を向けて、本当は男だ!と分からせてやろう睨み付けると…
『可愛いなあ!』
と言われてしまいました。
夜と言う事もあったせいなのか?
ボクが男だとは全く気付いてくれません。
改めて、こんな夜に男性から声をかけられたら…
女性は立場もなく弱いものだと気付きました。
そして…幼い頃からの男性への嫌悪も重なり…
自分が男性として生きている事が怖くなりました。
車の中の男と同じペニスが、ボクにも付いている事実に悲しくなりました。
そんな車が一台、二台、三台と続くのです。
漠然と…ただ漠然と…
《こんなペニスなんか無くなって欲しい…》
そんな気持ちにさせられるほど…
自分の性に嫌悪が増していくのでした。
国道を迂回し、人気の無い小さい路地に入りました。
遠回りしながら、御調教部屋のあるマンションに着いたのはPM11:30。
予定した時間より30分オーバーです。
自転車を降りて、マンションの薄暗い駐輪場に入りました。
その時!
突然後ろから呼び止められる女性の声に《ドキッ!》としました。
『夜分にすいませんが…』
『あっ!は、はい…』(震えるような小声で)
怖くて振り返る事ができません。
《誰なんだろう?こんな真夜中に声をかけられるなんて…》
すでにボクの後姿…Tバックは完全に見られています!
恐る恐る声のする方に視線を向けると…
『後ろから突然お声かけして申し訳ありません。私、こう言う者です。』
と、黒い手帳のような物を目の前に差し出しました。
《警察手帳だ!!》
そうです!先日の不合格を言い渡された日。
ショックを受けて帰ろうとした時、ボクを呼び止めた私服婦人警官のようです。
暗闇からの突然の呼び掛けと…
相手が婦人警官だった二重の驚きでますます声が震えていました。
『な、なにか…?』
『驚かせてごめんなさい。こちらのマンションの方ですか?』
『い、いえ…そ、その…お知り合いに…会いに…そ、その……』
『そうでしたか。失礼いたしました。
実はこの付近に露出狂が出ると噂されてまして、パトロールしていた所だったんです。』
『は、はぁ…』
『ちょうどこの付近をパトロールしていましたら…あなたを見かけまして…』
『そ、そ、そ、そうですか』
まともに話せてません。
『確か…以前にもお見かけしましたよね?』
『は、はい…』
無理に知らないフリをするよりは良かれと思い正直に答えました。
『それにしてもすごいファッションですよね。奇抜だったので覚えています。』
鼓動が地面に響きそうな程にドキドキしていました。
この婦人警官には、ボクの心音が聞こえているんじゃないか?と思えるほど。
『は、はい…』
『あなたのファッションについて、とやかく言える事ではないのですが…』
『は、はぁ…』
『若い女性が、そのような格好で外出するのは止めた方がいいですよ。』
《女性?ボクが女性に見られているのかな?》
お化粧を覚えるのはまだ先の事で、スッピンのボクが女性に間違われたのです。
しかも…女性に。
しかも婦人警官に。
『す、すいません…。』
『先程も言いましたけど…この辺りは変質者の犯罪が多いんです。』
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- 1983-03-31
- 試練Ⅳ
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