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22歳 4月 vol.6

トラウマ
玄関ホールの扉。
通常ですとオートロック機能により…
玄関ホールにて、あらかじめ訪問先と連絡を取らないと開かない仕組みなのですが…。
ボクがこのマンションにお呼ばれする時は、常に玄関ホールの扉は解放されていました。
今夜もまた、扉は開かれています。

四つ足で玄関ホールに入り、手でホールのガラス扉を閉めました。
閉めると《カチャ》っと音がして、扉に鍵がかかる音が聞こえました。
エレベーターは1Fに降りていて、難なく乗り込む事ができました。
時計も花壇に沈めてしまったので、お約束のお時間まで何分あるのかわかりません。

《誰もエレベーターに乗ってきませんように!!早く8階に着いて!!》

エレベーターの階を知らせる明かりを、四つ足のまま祈る思いで見上げていました。
その切なる願いは…ボクがトラウマになってしまった例の音で打ち破られました。

《ポーン!》
止まる階を知らせるエレベーターの音が響きます。
小さなエレベーター音に驚いたボクの身体は、不規則な大きな震えを産み出しています。

《ドキッ!》(ブルルッ!)
2階に着いてドアが開くと…あの日のように真っ暗で誰もいません。
急いで閉じるボタンを押すのですが…
震える指はエレベーターのボタンすら満足に押せません。
自然にドアが閉まると…何秒かの沈黙があり、再び…。
《ポーン!》のエレベーター音。
正直言って、この音には気が狂いそうでした。

家を出てから、気を落ち着ける暇などありません。
怖さを別の気持ちに転化させる余裕すらないのです。
特にマンションに着いてからは、時間への焦りと恐怖感が合わさって…。
ボクの心臓は壊れる寸前です。
3Fも2Fと同様に真っ暗でした。
閉じるボタンを震える指で押すのは無理なようです。
震える指が間違えて別の階でも押したりしたら、お約束のお時間に間に合いません。

すると今度は…
エレベーターホールに微かに響く話声を聞き取りました。
何階から聞こえてくる声かわかりませんが、確かに人間の声です。
あの日と同じならば6Fの可能性もあります。
ドアが閉まると話声は小さくなりました。

《ポーン!》
4Fでエレベーターの扉が開くと、先程よりも話声はクリアに聞こえました。
女性の声です!間違いなく女性です!
あの日に聞いたアキさんと言われる方を呼んでいた声に聞こえます…。
《エレベーターまだかなあ…》と聞こえます。

冷静ではない頭で必死に考えました。
《ボクの予測が正しければ、間違いなく彼女は6Fにいる…。
そしてこのエレベーターは、あの日と同じように全階に止まる可能性もある…。
このまま6Fに着いたら間違いなく見つかっちゃう!
そうだ…5階が、もしも今までのように真っ暗だったら…
5階で降りて、非常階段で8階まで上がろう…。》

4Fのエレベーターの扉が締まります。
1、2秒の内に《ポーン!》という悪魔の音がなるハズ…。

『………………。』

《え?鳴らない…》
あの日と同じなら、5階で止まるハズのエレベーターが止まりません!
上方の階数を知らせる明かりが5を通り過ぎた時。

《ポーン!》

5階を通り過ぎて…6階に止まってしまいます!
女性の声が聞こえてくる6階に向かっています。
もうどうする事もできません。
逃げ隠れ、言い訳、そんな事はできない場所に全裸で乗っているのです。
震えて動けようもなく…蹲るしかありませんでした。
声はますます大きく聞こえていました。
6階でエレベーターも待つ女性は鼻歌を歌われているようです。
鼻歌が数秒後には、変態に驚く悲鳴に変わるのでしょう。

遂に…エレベーターは6階に止まります。
聞こえていた鼻歌は止み、一瞬の静寂が訪れました。
そして、ゆっくりとエレベーターの扉が開きました。

《終わりだ…終わった…全裸のボクを見て、彼女は叫び狂うだろう》

1秒、2秒…。
扉が開いて、ボクの姿が見えているハズなのに静寂は続いています。

《あまりにも驚いて…声が出ないのかもしれない…》

3秒、4秒…。
静寂です。
すると…
コツコツコツと靴音を響かせて、エレベーター内に乗り込む音がしました。

《やっぱり誰かいたんだ…見つかった…》

震えは一層大きくなり、頭を上げる事もできないまま蹲り…
心の中で《ごめんなさい!ごめんなさい!こんな姿でごめんなさい!》と叫んでいました。

エレベーターの扉が閉まります。
目の前に、全裸の人間がいるにもかかわらず…この静寂はなんだろう?
《いっそ…『変態!』とか『キャー!』とか叫んでくれた方がまだ楽なのに…》
自分の置かれた悲惨な状況を忘れて考えていました。
小さな箱の中に、全裸で蹲る変態と普通のOLらしき女性が乗っているのです。
叫ぶ訳でもなく…彼女はボクの存在に気付かないかのような振る舞いで…
上方に迎うエレベーターの作動音だけが聞こえています。

《ポーン!》
8階に着きました。
同じ箱にいる女性は降りる気配はなく…
全裸マゾも降りるタイミングを失っていると…。
蹲っていた頭を押さえつけるような重みを感じました。

『降りませんの?』
一緒に乗っていた女性が、ボクに話し掛けています。
頭を押さえつけていたのは、どうやら彼女のヒールのようです。
彼女のヒールが、ボクの頭を踏み付けているんです。

《いきなり…普通のOLが頭を踏み付けてたりするだろか?
『降りませんの?』
奈美様?そのお声は…奈美様?なぜ奈美様が6階に?》

確認しようにも、頭を押さえられているので顔を上げられず…。
声を出したくても、今までの恐怖感で声が出ないんです。
声を失う程の恐怖を味わった事がおありでしょうか?

上手に意識を失えた方が、ある意味では楽なのかもしれません。
精神力の限界まで達すれば、その場の怖さからは逃げられます。
声を失う恐怖はその一歩手前です。
起こりくる恐怖に対して、意識を失わせて逃げる事も許されず…
ボクを極限まで追い込んでいきます。

『降りませんの?』

奈美様らしき方の問い掛けに…。

『……。』

頭を押さえつけていたボクは答えられません。
口は動くものの…声が出ません。

女性は…《仕方ないわね》と言うと、首輪の部分に何かを取り付けました。
そして…頭を押さえつけていたヒールを離され。

『出なさい』

と、先にエレベーターを降りられました。
降りると同時に、ボクの首輪が引っ張られます。
首輪に装着されたのは鎖のリードのようで、蹲るボクをグイグイと外に引きずり出そうとしています。
動かなかった身体は、締め付けられる首の痛さに負け…
少しづつエレベーターの外へ向かっていました。
自分を引く鎖のリードの先を目で辿ると…。

《奈美様ぁ…。》

冷たい眼で見下ろされ、容赦なく鎖を引かれておいででした。




余談ですが…。
この状況も、完璧に計算された罠です。
所属しているサークルには様々な職種の方々がおり…
ここで奈美様が登場されたのは、奈美様の御意志を尊重した精神科医のアドバイスに他ならず…。
ボクは完璧にサークルの術中に堕ちているのです。

奈美様の御意志とは…
ボクに気絶などさせず、延々と恐怖を味あわせる事。
そして、ボクの極限を知る事。
その行為は、ある意味犯罪にも思われるでしょう。
虐待に取られる方もおいでかもしれません。

ただ…これらの追込みはボクらの世界には必要な処方箋なのです。
相手の精神的限界を知る事は必要です。
SMは、御調教によって身体を傷つけたりしますが…
最も大事なのは精神を傷つけない事です。
精神を傷つけたり、破壊してしまう事がSMと言われる『愛』には存在してしまいます。
身体の傷はある程度快方に向かいますが、一度精神を病んでしまうと取り返しがつきません。
ボクが経験してきた恐怖は、全てが計算され尽くした事でありながら…。
最終的には奈美様もボクも病んでいきます。

このブログをお読みになられている皆様!
願わくばボクらのようになりませんように。

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